六分儀を使ってみました

これは六分儀という古典的な機械です。
何に使うかといえば、揺れる船のうえで手に持って自分の船の位置を星の観測から求める装置です。正確な時計と星の位置が記載された星表があれば、かなりの精度で自船の位置を求められます。
かつては四分儀や八分儀といった観測機械もありましたが、近年まで多くの船には六分儀が積まれていました。古い映画などをみると航海士が六分儀で天測をして計算尺をつかって大きな海図に定規で線を引いていくというシーンが見られます。
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1.どんな構造かな
 
まずは各部の名称
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テキトーに訳したものもありますので正確かどうかは定かではありません。
 
2.発見の経緯
さてこの六分儀ですが、耐震工事が入るというので実験室の掃除をしていたときに発見しました。棚の一番下の奥深くにA3版ほどの木箱が置いてあり、開けるとなかからこれが出てきました。もし掃除しなければずっとそのままだったかもしれません。
 
いつ頃のものか箱にも本体にも記載はなく、置かれていた状況から昭和30年代ではないかと推察しています。(他に昭和30年代の新聞紙にくるまれた化石なども発見しました) 50年以上も経っているのかもしれません。本体アーク部分に TAMAYA TOKYO とあります。
現在もある会社で タマヤ計測システム といい、塗装などは違いますが同社のMS-833という商品に似ています。ガリレオ式の望遠鏡を装備したエコノミーモデルです。
 
ネット検索で見つけた、青森県 みちのく北方漁船博物館 所蔵の六分儀と同じではないかと思います。
 
もう少し詳しく調べようと「みちのく北方漁船博物館」のサイトを検索すると
http://www.mtwbm.com/index.php で発見するも
みちのく北方漁船博物館は、諸事情により平成26年331日をもちまして閉館いたします。」
 
だそうで、展示品はどうなったんでしょう?
 
しかし多少のアタリやこすれ、塗装剝げ、サビなどはあるものの、どこも壊れている様子はなく使えそうなので、実際に使って見て使用方法を確認したいと思います。
 
3.清掃しました
まずは無水アルコールを使って汚れを落としてみました。
アークに刻まれたゲージは -5~125度 六分儀ですから使えるのは120度です。
インデックスバー(示標桿)の可動範囲を調べてみます。
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ゲージ0度の位置
固定してある水平鏡と動鏡が平行になっています。
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ゲージが120度の位置
水平鏡と動鏡が60度傾いて、入射角・反射角で120度になります。
水平線とのなす角だけでなく星と星との角距離も測れます。
 
4.使いかた
a:持ち方の写真
グリップを握って望遠鏡が水平になるように持ちます。これが意外と重いのです。量ってみると2.1kgもありました。
しっかりホールドして長時間使うには相当の力が必要です。まあ、手早くやれば疲れなくてすむので迅速にやれということなのでしょう。
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正面からみたところ
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横からみたところ
 
b:六分儀の初期値設定
望遠鏡を水平にして覗くと、視野の左半分は素通しでそのまま遠方が見えます。そして視野の右半分は上にある動鏡から導入された光が見えます。
水平鏡と動鏡が平行であれば左半分と右半分は同じものが見えるはずで、クランプをつまんでインデックスバーを動かしおおよそ同じものが見えたところで止め、マイクロメータードラムで微調整をして左右を一致させます。
このときゲージが 00°00' を指していればよいのですが、この機械では02’の誤差がありました。(水平の時02’を指します)これを記録しておきます。
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c:六分儀を水平にして星を導入してみます。
図の右のようにインデックスバーとマイクロメータードラムを操作して、目標の星を視野右に導入します。
ここでゲージを読みます。
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d:数値を読みます
アークに刻まれたゲージの数字が消えかけていますが、なんとか 47° と読めます。
そしてドラムの表示が 01 を指しているので、47°01' となります。
さらに 最初の設定で02' 大きく表示されるので、その分を差し引いて
47°01'-02'=46°59' が求める数値となります。
 
5.裏面もチェックします。
グリップは電池ボックスも兼ねていて、単1電池が入ります。グリップの親指近くにあるボタンを押せば、ゲージに付いている豆電球が光って夜でも数値が読めるようになっています。
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6.置き方
グリップの上のネジは先端が出っ張っていて、六分儀を置くときに役立ちます。倒れないように三点支持で置けるようにできています。
 
7.遮光ガラス(シェードグラス)
遮光ガラスは、太陽や月など明るいものを見るときのフィルターで、水平鏡には丸型が3枚、動鏡には四角い形状のフィルターが4枚 それぞれ濃度を変えて付いています。太陽を見るときには最も暗いものを選択します。
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水平鏡の3種類のフィルター
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動鏡の4種のフィルター
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ラック部分
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マイクロメータドラム : スクリュー式の微動ネジです。
1周で1°分動くので、0~60までゲージが切ってあって1°を60等分できます。
 
測定した数値をどう使うかは次回に書きます。
 
・・・と書きましたが、あれこれ調べていくと本気のサイトを発見
こりゃあ こちらのサイトが一番わかりやすい と感心してリンクを張っておきます。
わ れ ら 海 族
というサイトです。航海士さんが書かれているようですね。